オールドランタンに見る、 ローテクノロジーが可能にする不便な価値【7日目】

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この記事はShiftallのプロジェクトに関わるメンバーが日替わりでブログを更新していくアドベントカレンダー企画の7日目です。その他の記事はこちらのリンクからご覧下さい。

アドベントカレンダー2019
https://blog.shiftall.net/ja/archives/tag/adventcalendar2019/

10月よりパナソニックからShiftallへ出向という形で所属している藤原です。主にメカ設計を担当しています。

こちらに来てまだ2ヶ月程ですが、大きな組織とは全く違う職場の雰囲気や仕事の進め方、スピード感など、これまで経験出来なかった事が沢山あり刺激のある日々を過ごしております。

社内の常識は社外では非常識であったり、またその逆もあるでしょう。会社の枠を超えた新しい働き方を体験する事は自らの成長に繋がります。

パナソニックでは「社外留職」という制度がありますが、色々なチャンスを使い多くの人が会社を飛び出し、多様な価値観とスキルに触れてもらえればなと思います。

初めてのアドベントカレンダー。テーマは「ローテク」

技術職ではありますが、ローテクにフォーカスした記事を書きたいと思います。

本格的なデジタル家電の幕が開けた2000年以降、アナログ製品はIOT化によって、その姿を変え進化したか、そうでないモノは世から消えていきました。

この変化は家電業界だけではなく、比較的ローテクが主導であったスポーツや余暇活動に使われる道具においても同様、スマートフォンの普及やIoTや位置情報などの導入によりハイテク化が進み、デバイスといった表現の方がしっくりくるようになりました。

ローテクレジャーの代表格「キャンプ」

何かを競うスポーツの分野においてはハイテク化が担う役割は大きいといえます。タイムや距離の精度向上や人の感覚を数値化したり、リアルタイムに何かを可視化し共有する事は多くのアスリートやそれを観戦する側にとっても大きなメリットでありテクノロジーの進化がもたらした大きな成果です。

ただ余暇活動においてはその限りでありませんが、とりわけキャンプにおいてはハイテクの対極に位置するローテクの代表格だと言えます。はたしてこの分野でスポーツ業界と同じようなデジタル革命の波はやってくるのでしょうか。

キャンプ人口は850万人

6年連続で前年度を上回る数字らしいです。850万人と言われてもピンとこないかもしれませんが、サイクリング910万人、海水浴730万人、釣り690万人、ゴルフ600万人。という数値を見れば、そこそこメジャーな余暇活動と言え、それなりの市場規模があるのだと想像できます。

オートキャンプ参加人口6年連続で前年増、ソロキャンプが人気に。 – FNN.jpプライムオンライン
https://www.fnn.jp/posts/000000008_000022815/201907101600_PRT_PRT

便利は二の次。デジタル革命が起きない業界

キャンプをする目的は「不便を楽しむものだ」という人もいれば「非日常を楽しむよ」「家族や仲間との交流さ」「自然に癒されたいのよ」など色々な意見はあるようですが楽しみ方は人それぞれです。

ただ、共通して言えることは道具がローテクでもそれらの目的のほとんどをそれなりに達成できてしまう事と、電源や通信などのインフラがほぼ整っていないという「そもそも論」が背景にあります。

これらの理由からキャンプ界に道具のデジタル革命が起きにくい原因だと考えられ、仮に足らない所があってもハイテク側から補うのでなく、逆のアプローチから解決するのが一般的になっているように感じます。

その例として、今では生産されていない古い道具「ビンテージギア」を使ったキャンプスタイルや、真冬でもテント内で薪ストーブを持ち込んでキャンプをするなど、デジタル化どころか時代に逆行した新たなカルチャーが生まれてきているというのがここ最近のトレンドです。

ローテクの代表、ガソリンランタン

例に漏れずキャンプ好きの筆者も道具のノスタルジア志向が進んでいるのですが、その中でも欠かせないランタンについて紹介したいと思います。

キャンプにおける照明器具においてはテクノロジーと共に進化した稀な道具で、古くは化石燃料が主体でしたが最近ではLED化されたランタンが一般的です。

一方、写真のランタンはホワイトガソリンを燃料としており、その中でも所謂「ビンテージ」と呼ばれる、今では生産されていないモデルです。

このランタンはコールマン社が1961年にカナダで製造した”Model200”という60年近く前の製品で、金色に輝く真鍮製のタンクが特徴です。もちろん機能的には申し分なく普通に使えます(元々は赤色ですが、塗装を剥がし磨きをかけたカスタムモデル)。

シンプルな作りと壊れにくさ、消耗品が簡単に手に入ることから維持も簡単。灯がつくまでそこそこ手間は掛かりますが、光の色と揺らぎが醸す雰囲気は、それに至るプロセスを含めLEDランタンには出せない魅力です。

また様々なレアモデルが存在することからマニアのコレクターアイテムになったり、自分の生まれ年のランタンを「バースデーランタン」として収集する人もいて、もはや道具が果たすべき本来の役割以外が所有の目的となっている状況です。

趣向品という特別区

論理的に言ってしまえば、明るさ、携帯性、コストパフォーマンスなど、実用面ではLEDランタンに軍配は上がりますが、情緒的に言えばその価値は逆転してしまいます。つまりランタンを趣向品と捉えている人にとってスペックはさほど重要ではなく、色々な思いを宿すことにより、それぞれ新たな価値を作り上げており第三者がそれを切り崩すことは非常に困難です。

このような事例は旧車や銀塩カメラ、ターンテーブルなどの趣向品や、田舎暮らし、古民家、園芸などのライフスタイルにも同じことが言え、デジタル革命が起こりにくい、言わば特別区のような市場だと個人的に思います。

不便を価値として活かす考え方

「すべてが便利でなくていい」京大・川上教授が研究する、世界をよくする「不便益」とは? | 学割・大学生お得情報 | 授業・履修・ゼミ | マイナビ 学生の窓口
「すべてが便利でなくていい」京大・川上教授が研究する、世界をよくする「不便益」とは? | 学割・大学生お得情報 | 授業・履修・ゼミ | マイナビ 学生の窓口(画像クリックでリンク先を表示します)

京都大学情報学研究科の川上教授が提唱されている「不便益」という言葉があります。

「便利になればマイナスな事もある」「便利の押しつけが人から生活する事や成長する事を奪ってはいけない。」という考え方です(例えばカーナビが普及し地図が読めなくなったとか)。

不便益って?|不便益システム研究所
http://fuben-eki.jp/whatsfuben-eki/

だたし、テクノロジーを否定するのではなく「ITやAIなどの最新テクノロジーと不便を組み合わせ人のプラスになる新しいデザインやサービスを考えていきましょう」という活動をされており、この辺りにローテク志向の人たちに風穴を空けるヒントが隠れているのではないかなと感じています。

消費から再生の時代へ

2030アジェンダ | 国連広報センター(画像クリックでリンク先を表示します)
2030アジェンダ | 国連広報センター(画像クリックでリンク先を表示します)

テクノロジーの進化と共に人々はより便利で快適な生活を手に入れてきました。それを支えてきたのは我々の消費活動であり、大量生産と大量廃棄を繰り返すことで我々はあらゆるモノをもアップデートさせてきました。

ただ、それにも限界や歪が生じてきているという事は誰もが気付き始めていることだと思います。マイノリティであれ、あえて手間やお金がかかるローテクに意識が向かうのも消費することに疲れてしまった事が原因としてあるのかもしれません。

消費には二つの側面があり、1つは機能の消失「故障」。もう1つは精神の喪失。つまり「飽き」です。いずれも回避する事は困難ですがSDGsの取り組みが注目される中、我々は「消費」という行為と意味を今一度見つめなおす時期にきているのではないでしょうか。

これからは「再生」というキーワードをコンテンツ化してそこにテクノロジーをつぎ込み実装できればローテク主導のキャンプ業界にも新たなデジタル革命を巻き起こせるかもしれません。

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Shiftallでは現在プロダクトマネージャーを募集しています。ご興味をお持ちの方は下記URLから募集要項をご覧下さい。

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