この記事はShiftallのプロジェクトに関わるメンバーが日替わりでブログを更新していくアドベントカレンダー企画の4日目です。その他の記事はこちらのリンクからご覧下さい。
アドベントカレンダー2018
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こんにちは。Shiftallで一応デザメカエンジニアしている、ねこもくいぬかの人です。
普段は3DCADとかを用いて製品の設計とかやっています。
皆さんは製品を購入したとき何をしますか。きっと目的をもって購入した製品ですからその目的に沿った楽しみ方をすると思います。
しかしそんな常識を理不尽に破る楽しみ方が存在します。
BUN・KAI
そう。分解です。
私は分解は好きだ。
ドライバーを使うのが好きだ
内部がどうなっているのか見るのが好きだ。
どんな素材が使われているのか知るのが好きだ。
この卓上で行われるありとあらゆる分解行動が好きだ。
ゲート跡など見つけたときには心躍る。
分解したものを再度組み立てられたときには感動すら覚える。
必死に取っておいたねじがどこかに飛んでいくのは悲しいものだ。
はめ殺しの爪が折れるのは屈辱の極みだ。
私は発売されたばかりの製品を分解することを望んでいる。
このブログは私に何を望む。
分・解!分・解!分・解!
よろしい。ならば分解だ。
分解の心得
分解をする理由は3つあります。
- 創りたいプロダクトの類似製品をバラし、即その構造を参考にする
- 分解することで構造をなんとなく記憶に留める。将来のための引き出しとする
- 好奇心
時と場合によっては一番上と真ん中の場合がありますが、だいたい一番下の好奇心です。
分解をするにあたり大事なことは、分解によって製品を壊すかもしれないこと、そしてその責任はすべて自分にあることを覚悟することです。壊したからと言ってメーカーに助けを求めることも許されません。
「新品の製品をバラす覚悟はいいか?俺はできてる。」
と言って覚悟完了しておきましょう。
大丈夫です。もし失敗して壊しても本気の失敗には価値があります。好きな漫画にかいてました。
それでは分解を始めます。
今回は任天堂の「モンスターボール Plus」を分解します。
分解はパッケージから
パッケージを開ける前に化粧箱のチェックからはじめます。
ここで気になった点がありました。
- パッケージの素材がGフルート
- 印刷はオフセット印刷
- 構造はアメリカン・ロック方式
- 認証マークの記載はTELEC認証番号とVCCIマーク
製品のパッケージは重要な情報が多く記載されており、印刷内容や素材、デザインなど勉強になることが多いです。
箱を開ける
箱を開けます。「パッケージあけてるだけやん!」と思いがちですが、開封の儀はすでに分解に変わっています。気を引き締めていきましょう。
製品がパッケージされている梱包資材は製品を知る上ですごく重要な項目になります。どういった順番にどんな素材でパッケージされているか、具体的にはわからないでもこれくらいの製品なら、こんな感じの梱包で、長時間の輸送に耐えてきた指標になります。
梱包資材の設計にも結構な手間がかかっているのですが、無事にユーザーの手に届いた時点でほぼその役目は終わりとなります。ここまでありがとう。さようなら。
フィギュアとかゲームの箱は捨てずに置いておく派です。
地味ですが製品のバーコードがすぐに目に見えるよう梱包されている点も注目です。
製品を知る
とりあえず製品で遊びます。遊びながらどこに何があってどんな機能があるか、組み立て手順はどうなっている等、想像しながら確認していきます。
- 本体の手触り
- 物理的な切れ目がない上部ボタン
- むら無くリング状に点灯するLED
などが今回気になった点です。主に構造に関わる点が多いです。
いざ分解
まず、分解できそうなところを探します。モンスターボール Plusは背面に充電用のUSB Type-Cポートがあるのでそこから見ていくことにします。
「特殊ねじが使われる」=「開けるなよ! 絶対開けるなよ!! 」的なネタ振りと思われるのでしっかり乗っていきます。
ねじを外し、樹脂製のツメによる簡易ロックを外してモンスターボールPlusを上下に分離することができました。
本体側には基板やジョイスティックなどの構成部品が確認できます。ねじも何箇所か見えているのでここからさらに分解できそうです。
逆に底蓋となる白い部品の方には大きな電気機構部品が乗っています。
更に4本のトライウイングねじを外すことでこのデバイスを取り出すことができました。どうやら振動アクチュエータとスピーカが一体となったもののようです。
本体の筐体は外側の白い樹脂はTPU、内側の黒い樹脂はPC+ABSの2色成形でつくられていました。
本体と取り外した基板
基板につながるコネクタ類を外し、3箇所のねじを外すと基板が取れます。後で気づいたことですが、組立工程の逆順としては間違いだったようです。
基板の裏面2箇所にフルカラーLEDが確認できました。これを発光源として、きれいなリング状の光を演出しています。どうやって導光しているのかこの時点では不明です。
更に3箇所のトライウイングねじを外すことで、ジョイスティックのある真ん中の黒い部分が外れます。
この部分、基板が付いたままでも2箇所の配線を外すだけで外すことができました。こういう事に後で気づくのもまた醍醐味です。
ストラップはこの時点で製品と一体化されていました。ストラップがはじめから組み付いている製品は珍しいと思います。
充電ポートのカバー白い部品はTPEでできていました。本体のTPUと同じ熱可塑性エラストマーですがこちらはウレタン系じゃない素材みたいです。
真ん中のブロックを更に分解しさらに4つにバラすことができました。
- 一番左、この更にバッテリーとジョイスティックの電気機構部品に分かれます
- 中央、透明の部品は導光部品です。この部品を使って光を導光しリング状に光らせていました。中央部分には白いテープが張ってあり、均一な発光を実現していました。リング状にきれいに光らせるのは結構難しいです
- 一番右、この部品はリセットボタンです。詳細はわかりませんが柔らかいシリコン素材でした
最後に赤いブロックを分解します。
- 一番左、筐体部品。白の底部と同様にTPUとPC+ABS
- 右から2番目、POM製のボタンパーツ
- 中央、ボタンとの接点となるシリコンパーツ
- 左から2番目、ボタンスイッチとアンテナを備えた基板
- 一番右、上記の部品を抑えていた部品。この部品についていた3つのトライウイングねじを外すことで各部品にアクセスできました
以上で分解完了です。部品点数は11点、基板2枚、モジュール2点、ねじ3種類18本バッテリー、ストラップで構成されていました。
余談ですがモンスターボールの中に幻のポケモン 「ミュウ」が入っていることはありませんでした。
中に誰もいませんよ。
良い子のみんなは「ポケットモンスター Let’s Go! 」から受け取ってください。
分解の後に
分解が終わったら、たくさんのことを教えてくれた製品に対し感謝の気持ちを持って組み直しましょう。分解の逆のことをすればいいので簡単です。簡単なはずですがよく失敗します。ねじとか余ったり足りなくなったりします。分解しながらしっかり写真を取ることを推奨します。
最後に
おそらく世に出ている製品の殆どは関係者たちの血と汗と涙と努力の上に上市されていると思いますので軽い気持ちでの安易な分解は推奨しません。くどいようですが分解をしていいのは製品を壊す覚悟のある人だけです。分解による破損の保証をメーカーに求めるなどもってのほかです。
……ですが、分解はまだ見ぬ知見を与えてくれる魅惑の果実でもあります。
あくまでも自身に責任があることを自覚し用法用量を守ってお楽しみください。