この記事はShiftallのプロジェクトに関わるメンバーが日替わりでブログを更新していくアドベントカレンダー企画の20日目です。その他の記事はこちらのリンクからご覧下さい。
アドベントカレンダー2019
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こんにちは、Shiftallではプロジェクト管理・営業まわりを担当している佐藤です。
皆さんご存知のとおり、Shiftallはハードウェア企業です。
ハードウェア企業というと社員の構成でエンジニアが多くを占め、いわゆる「理系集団」なのですが、その中でも私は文系学部出身の珍しい存在です。
新卒で入社した企業はとあるフランチャイズビジネスをやっている会社で、そこではWEBマーケティングの仕事をしていました。大学生だった頃はテック系のライターをしていたり訪日外国人向けのWEBメディアの立ち上げをしていたりと、どちらかというとサービス・WEB寄りの人間でした。
幅広く「IT」として見れば私の経歴はそれぞれ関連性があるように見えますが、「ものづくり」という意味では全くの別世界。
そんな私は3年ほど前にハードウェアベンチャーの世界に飛び込み、エンジニア文化に揉まれながら様々な経験をしてきました。
ここでは文系出身の社員である私から見た、「ハードウェアベンチャーあるある?」な出来事をご紹介していきたいと思います。ではいってみましょう!
基板と基盤を間違える
文系サイドの人間が入社して早々にエンジニアから指摘をもらうのがまずコレでしょう。
ハードウェアには無くてはならない電子回路基板ですが、決して「基盤」ではありません。
パソコンやスマホで「きばん」と入力するとたいてい「基盤」が先に変換されてしまうので間違えてしまうんですよね。
基盤は「ある物事を成立させるための基礎や土台」という意味で、たとえば「システム基盤」とかそういう使われ方をしますね。
絶対に正しい呼び名などない?呼び方論争
つい先日Twitterでも話題になっていましたが、人によって呼び方が異なるタイプのモノがこの世には存在します。
私がこの世界に来るまで「結束バンド」と思っていたモノも人によれば、
・タイラップ
・インシュロック
なんて呼ばれたりします。どれも同じものですがブランド名が異なるだけ。つまり商標が普通名称化しているということなのですが、これがたまに厄介。
この世界に長くいればとすぐ理解される用語でも、外の世界でると全く理解されないことも多々あり…これは一種の職業病でしょうか。
コンマ1mmを笑うものはコンマ1mmに泣く
まさかこの業界にくるまで「コンマ1mmの世界」があるなんて想像もしていませんでした。
一般の利用者から見たら工業製品というのは「仕様どおり・期待どおりに動作する箱」に見えると思います。
たとえば、冷蔵庫はコンセントを挿したら期待した通りに内部は冷えるし、プリンターはデータを転送したら期待どおりに紙が吸い出されてデータどおりに印刷されることが当然であると一般利用者は思っています。
それらの箱の内部にはメカエンジニアによって設計された物理的な機構が理論的に構成されています。その構成がユーザーの「当たり前」を作りだしています(この場合はメカという意味で)
その構成には、様々な部品が互いに結びついていたり、積み重ねられていたりするわけですが、どの部品にも誤差があったり、素材による特性があります。特性というのは、たとえば樹脂の種類によって耐衝撃性が違ったりとか。
ここでいう誤差はコンマ1mmレベルの細かな誤差です。びっくりですけど、ここがかなり重要。
そのコンマ1mmの誤差が積み重なることで「あれ?3Dデータ上では問題なかったけど、出来上がってきたものはフタが閉まらないぞ?!」なんてことも。
わずかな誤差や公差の許容が手戻りを生みます。ここを考えてを設計しているエンジニアさんは本当に尊敬します。
エンジニアが発する言葉に驚くなかれ
文系出身の人間がハードウェア企業で働くと、生まれてこの方聞いたこともない言葉を耳にすることがあります。特に機械設計の分野では多いです。
例えば、
・バカ穴 → 通るネジの径よりも少し大きく開けた穴のこと(詳しくはこちら記事を参照!)
・ネジをなめる → ねじの頭部分が潰れること。「ネジがバカ状態になってる」と呼ぶ人もいますね。ネジに人権なし。
・シボ → 樹脂の表面にシワ模様をつける表面加工のこと。たいていの工業製品の表面にはシボがあります。
こんなところ。みなさんは聞いたことありますかね?
いろんな言葉を覚えてきて最近では違和感を感じる場面も少なくなってきましたが、ついこの間「え?なに?」って思った言葉は「デコデコ」
これはDCDCコンバーターのことで、直流の電圧値を変換する装置のことです。これを聞いた時に私が今はなき家電量販店の名前かと思いました。。。まだまだ知らない世界はいっぱい!
中国出張は突然に。0泊3日の深セン出張は実在する。
我々のような小ロットで製品を作るような企業では、量産は外部の工場を活用します。いわゆるEMSと呼ばれる外部委託です。委託先はいまや「世界の工場」である中国が多く、特に深セン・東莞・恵州などの広東省の電子製造業が盛んな地域の工場に委託します。
このあたりの地域のお隣には香港があり、香港空港からバスやフェリーを使ってスムーズに移動ができます。
香港と日本は一日に何便も往復しており、LCCも多く就航しているため、その気になればその日のうちに深センに行くことも可能。
この世界に入る前に「0泊3日の日帰り深セン出張」というのをウワサでは聞いていたのですが、これは実在します。
・前日の夜に深夜便で東京→香港へ移動
・当日、香港→深セン→工場で話をつけてくる→香港へ戻る
・当日の夜に深夜便で香港→東京で移動
・翌日の朝に東京に到着
これが「0泊3日の日帰り深セン出張」の全貌です。※飛行機内で2泊していることはノーカン
私も数回経験しましたが、これ決して無理をしているわけではないんですね。
・香港は東アジアに位置してるといえども、東京からの飛行機移動だと5時間ぐらいかかってしまい日中の移動には時間を食ってしまいもったいない
・深センの滞在をフルに活用できる
・5時間という時間が深夜の移動には短すぎずちょうどよい(これが例えば上海だとちょっと短いね)
ということで、効率よく深センへ移動して活動するにはこの方法がとても最適なのです。
絶望的な状況でも「まあまずお茶でも飲め」から始まる中国
続いても中国出張ネタですが、突然中国へ行かなきゃいけないという状況は客観的にみてもあまりいい状況ではありません。何も問題がなければべつに急いで行かなくてもいいわけです。
・不良品が大量に発生したので急遽現地へ見に行かなきゃいけない
・電話で話してもうまく言いたいことが伝わらないので実物を持って直接交渉にいく
例えばこのような状況。距離は近いようでお互い違う文化の国どうしですから、どうしてもコミュニケーションエラーが発生します。そんな状況の時に中国へ出張にいくのです。
そして今できる対策が無くなったどうしようもない時に、茶器がある社長室に関係者を集めて腰を据えて今後の方向性を決めます。工場の社長がお湯を沸かし「まあまずはお茶を飲め」と。中国の工場へ来たらまずこの「机と一体化した茶器セット」です。いい思い出と嫌な思い出、すべてがこの「社長室の茶器」に詰まっています。
一口で飲めるコップは空くとすぐに工場の社長が注いでくれるのでつい飲んでしまうのですが、飲みすぎると何度もトイレに行きたくなるので要注意。
初見でビビるチャイナ梱包
中国ネタで驚くことといえば、中国から送られていくる荷物です。黄色いテープで箱が隠れるんじゃないかぐらいに結構な確率でぐるぐる巻きにされています。
我々のような中国と頻繁に取引をしている企業ではよく見られる光景かなと思います。日本で普通に生活していたらまず見かけることはないでしょう。まさにハードウェア企業あるある。
リワークはみんなでやろう
ハードウェアの世界で切っても切れない関係なのが「リワーク」という特殊な概念です。
リワークとは、製造中もしくは製造完了時点で、品質を満たしていない製品を改善するために仕様を変更したり、追加作業を行わなければならない時に行う処理のことです。
個装箱に追加で必要になったシールを貼ったり、マイコンに書き込むソフトウェアを変更するレベルの比較的軽微なものから樹脂部品を削って修正したり、基板に乗っている部品を手はんだで修正したりと様々なリワークがあります。
このリワークは製造業では広く行われています。
我々のような小規模の集団だとオフィスでリワーク専用の机を設置して実施したりします。
数十台程度ならいいですが、一人で数百台のリワークをこなすのはしんどいものです。そんな時に仲間の力を借りて社員総出で手分けして実施することもあります。
そんな時に人間はやっぱり1人で生きられないなーと実感します。仲間には本当に感謝しかありません。
新しいものが好き!だからハードウェア開発のこの環境は楽しい
後半はかなり悲しいムードの漂う内容でしたが、それでも各エンジニア+バックオフィスのチームで力を合わせてハードウェアを作るのは楽しいです。やりがいがあります。
いやでも、誰が言ったか忘れましたが「Hardware is hard」と言われるように、ハードウェアを開発・量産するのは時には辛い場面もあります。
80%ぐらいのレベルの完成度であれば割と難なくクリアできたりするものですが、これを100%つまり量産レベルまで持っていく時にかなり高いハードルを乗り越えなければならないことがあります。
このようなゼロイチの開発はあらゆるビジネスにおいて苦痛が伴うものですが、ハードウェア開発ではとりわけ強く感じます。
それでも楽しくやっていけているのは、新しい技術やサービスに敏感だったり、すぐに考えて実行してくれるフットワークが軽く信頼できる仲間がいてこそだなと3年間勤めてきて思います。
例えばGoogle Homeが発売されたその日のうちに誰かが買って来てオフィスに置かれていたり…なんて感じに、ここまでテクノロジーに敏感な環境は今までありませんでした。
それぞれ違った分野でアンテナを張っているユニークな社員が集まって、社内のチャットツールで自由に情報を共有し合うのは従来型の日本企業ではなかなか無いのではないでしょうか?
こうした環境で仕事ができるのも、ハードウェアのベンチャー企業ならではありShiftallで働く魅力のひとつかなと思います。
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