この記事はShiftallのプロジェクトに関わるメンバーが日替わりでブログを更新していくアドベントカレンダー企画の21日目です。その他の記事はこちらのリンクからご覧下さい。
アドベントカレンダー2018
https://blog.shiftall.net/ja/archives/tag/adventcalendar2018/
こんにちは、電気エンジニアのすんです。
アドベントカレンダー21日目はJavasparrowの稲田氏とのコラボレーション企画です。
2018年も残りわずかとなりましたが、世間では今年もいろいろな出来事が起こりました。
平昌オリンピック開催や、パンダのシャンシャンが公開になったり、小室哲哉氏が引退したり……。
皆さんの今年印象に残った出来事は何でしょうか?
我々ものづくりに携わる人間にとっては、10月に興味深い事件が起こりました。
タイトルにおもいっきり書いてあるので溜めません。そう、バンクシーの絵画がオークションでシュレッダーにかけられた一件です。
「バンクシーに一杯食わされた」とあるように、結局自作自演であったようで、絵の価値がさらに上がったとかいろいろ騒がれていましたが、我々が興味を示すのはそこではありません。そう、我々は
「あの額縁の中ってどうなってるのかなぁ。」
です。
ものづくりに携わる人間にとっては、そこが一番気になるポイントではないでしょうか。
そこで、アドベントカレンダーというタイミングを機にこのシュレッダーを制作し、彼の額縁シュレッダーにかけた苦労、想いを共有できないか試みることにしました。
そうして出来上がったのがこちら。
ただシュレッダーを作るだけでは面白くなかったので、下にゴミ箱を設置して環境に配慮し、さらにバックアップのためにスマートフォンでのカメラ撮影をトリガーにしてスタートさせる機能も追加しました。これで間違ってシュレッダーしてしまった時も安心です。
では、さっそく作り方を書いていくことにしましょう。
電気について
用意するもの
micro:bit
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-12513/
モータードライバ
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-09848/
ギヤードモーター
5V2A ACアダプタ
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-08310/
まずマイコンボードとしてはmicro:bitを使用しました。ただ使ってみたかっただけなので深い理由はありません。
回路としてはシュレッダーの刃を回転させるためのモーターを動かすだけの簡単なものです。
モータードライバはmicro:bitの1ピン、2ピンをGPIOとして使って制御します。
ギヤードモーターは市販の電動ハンドシュレッダーを分解して使わせてもらいました。
そして電源はmicro:bit、モーター共にUSB給電(5V) です。
実際に組むとこのようになります。
今回はモバイルな用途ではなく、小型化が必要なかったのでブレッドボードを使わせてもらいました。
プログラム
続いてプログラムについてです。
micro:bitのプログラミングはPCのブラウザ上( https://makecode.microbit.org/# ) やスマートフォンのアプリを使って行うことができます。
教育用と謳っていることもあり、ブロックで遊んでいるかのようにプログラミングできるので、視覚的でとても簡単かつ楽しくプログラミングできました。
できたプログラムは以下になります。
https://makecode.microbit.org/_4KsbJt4bC0wm
内容をざっくりと説明しますと
- スマートフォンとmicro:bitをBluetoothで接続
- Aボタンを押してカメラを起動
- 3秒後にシャッターを切る
- 「start」の文字表示の後にモーター駆動開始
となります。
このプログラムをmicro:bitに読み込ませれば準備完了です。
ちなみにmicro:bitのスマートフォンアプリの使い方はこちらのサイトにわかりやすく書かれています。
micro:bitのスマホアプリの使い方
https://qiita.com/toyowata/items/00c596696a734c2551da
なお、プログラムをmicro:bitに読み込ませるのはPCから(USBケーブル経由)ではなく、スマートフォンアプリから行わないと、その後のmicro:bitとのBluetooth接続がうまくいきませんでした。
メカについて
メカを担当したJavasparrowの稲田です。
今回の構成はサイズやシュレッダー屑の都合上、刃は手回し用シュレッダーから。モーターは別の小型シュレッダーを使います。小型シュレッダーからモーターを取り出し、手回しシュレッダーの構造を分析しつつ、刃の部分をを取り出します。
寸法関係をメモしながらモデリング作業をします。
今回も、fusion360を使用します。このような感じでモデリングしました。
組み立て方法はレーザーカットでアクリル板を切り出し、板を組んでいく方法にしようと思います。
こちらが、先ほどの3Dをレーザーカット用に2D化したものです。
DMM.make Akibaの施設を利用させていただきました。材料を切り出し、仮組みを開始しました。
しかしここから想像もしなかった苦難が待っていました。
「まったく切れない!!」のです。
これはどういうことだろうか。。
刃と刃の距離が足らないのか。ということで刃と刃の間を狭めたパーツを作成。
それでも切れません……。なぜだ。どこに致命的な問題があるがわからなかったので、もう一度手回しシュレッダーを購入。
もう一度よく見てみると、私の作った試作よりも、手回しシュレッダーの刃は横方向の隙間が微妙に狭いことがわかりました。
なるほど…そこか。この横方向の絶妙な隙間こそ、紙を確実にカットする要件となっていると考え作戦を変更。手回しシュレッダーの刃とそれを支えるパーツごと移植することにしました。
ということで、シュレッダーオン……。切れた! が今度は切り屑が刃に絡まってしまいます。
もう一度観察。
刃は支える部分部分含めて移植しているのそこが問題ではなさそう。紙を挿入口の距離か?
それとも出口か?本当にわからない……?? これはなんだ?非常に怪しい……。
もう一度、製品の状態に組んでみると、この謎の帯状のパーツは刃の間を避けるように出口に向かっています。これは刃が紙を丸め込ませないための「シュレッダー屑送り」のようでした。再度スイッチオンすると……切れた!!!
普段何気なく使っている。安価なシュレッダーも様々な技術やノウハウの蓄積で商品になっているんですね。とても勉強になります。
そしてなんとか完成!! ではさっそく動かしてみましょう。
どうでしょうか…! カメラ撮影をトリガーに裁断が開始されました。
バンクシーさんが同じ苦労をされているかはわかりませんが、何か一体感を感じることができました。また、普段何気なく使われている道具も独特な技術やノウハウがあり、とても勉強になったと思います。
以上、アドベントカレンダー21日目でした。